『エノケンの爆弾児』

これは入居者向けってより、TV初放送・未ビデオ化作品なんだぞっていう自己満足の為の録画ですな。 DVDで録りたいよう。 *[喜劇][挿入歌あり] 1941年/69分/モノクロ/【日本映画データベース)】 >

榎本健一 (健吉/父/御隠居)
柳田貞一 (番頭・桑原)
如月寛多 (旦那)
中村是好 (易者・天心堂)
梅園かほる (娘・百合子)
宏川光子 (女中・光子)
澤井一郎 (息子・一郎)他

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< 大きな骨董屋「丸二」に奉公することになった健吉は、父の遺言を守り、迷信家の隠居に振り回されてもグッとこらえている。 だが、ある日、家族ぐるみで行ったハイキングで遭難し…。 >
< 野心家の番頭、現実主義の奉公人、迷信家の隠居の三つ巴。日本人は純朴でした。 >

エノケン一座が総出演、エノケン自身も3役をこなす、痛快喜劇。
エノケンの〜」というタイトルでおなじみの“エノケン”ものの戦前最後の作品。
いやはや、ネットにデータが無い。古いし、TV初放送・未ビデオ化作品らしいから電子情報は取りにくいか。 -【おたくとルサンチマン(日記):2004/01/18】 --《合成技術も使わず面倒なことやってる。ドリフに繋がるようなフシも多々見受けられた。風水オタの婆さんは志村っぽいし崖っぷちの山小屋シーンもドリフ臭い。インチキ祈祷師を信じこんでる医者嫌いの婆さんが最後しぶしぶ科学治療を受けることになるのだが治療室がすさまじくテクノだった(藁)あんなエセ近未来な科学機器の山を戦前の映画で見られるとは思わなんだ。汽車の中でエノケンが着てる服も人民服そっくりだったし(w(てゆーかホントの人民服だったのかも・・)》 -私見 --痛快…かどうかはさておき、喜劇の範疇なんだろう。画像も音質も良好だから、入居者にも鑑賞できるはず。 --爆笑の連続って感じじゃないけど、話運びに無駄は無い。理解に時間のかかる入居者には打って付けかも。 --テンポは現代からすると今ひとつだが、話の筋は単純で解り易い。ややダレてきた頃合に歌のシーンが入るから、入居者の集中は保てるかも。ラストの一幕は、セリフの掛け合いが全て歌で進行し、フィナーレのハッピー感を際立たせている。 --エノケンの感情を強調する仕草・動きはまさに職人芸で、笑うよりもじっくり観察をしてしまった。爆笑に至らなかったのは、世代の違いなんだろうな。 --題名の「爆弾」って何だろ。と考えてみた。父親の遺言である「怒るな」を忠実に守り、理不尽な仕打ちを受けてもイジメられてもじっと耐え抜いていた主人公が、番頭等にハメられて店を飛び出した際、ヤケ酒を飲もうとしていた店で彼らの企みを耳にしてしまい初めて“怒る”。それが事態丸ごとを引っくり返す起爆剤となったわけだ。“抱え続けていたもの”を象徴し、「爆弾」。と。違うかなぁ。 --ちゃんと亡き親父が出てきて怒る事を許し、「今怒らないでイツ怒る」と加勢までしちゃうんだから観る人に対して律儀と云おうか丁寧と云おうか。 --健吉と番頭の対決と同時に、「迷信」と「科学」を2本の軸にして話が進む。自分としては後者が楽しかった。健吉は「科学」派。番頭は、御隠居入魂の祈祷師と結託して御隠居の「迷信」を利用している。 --迷信に凝り固まってた御隠居が、一転し、迷信関係の物を庭で焼く際、堪らず隠居が「最期だから、ちょっと“日”を見ますね…」結果は、「本日家の物を壊すに良し」。一瞬「迷信」と「現実」が同調するのだ。 --その後、今度は健吉の方が「結婚の“日”を見て欲しい」と立場逆転。「易学なんて迷信だ。一日も早いほうが良いに決ってる」と隠居に一括される。 --結局、どちらに軍配を上げるでもなく、大円団とする構成が嬉しかった。 --隠居が“最先端科学を駆使した治療”を受けるシーンに苦笑い。看護婦や医師等が入室時、胸高に片手を挙げて合図をするのにウケてしまった(本来の大筋とは外れてるんだけどさ)。機材・設備はまるで実験室の如し。SFさながらの仰々しさ。いったい何の手術をする気なんだ?人造人間でも作るのか?…でも治ってしまう御隠居さんが素敵。 --技術革新の時代であり、「科学躍進!」な時期だったのかもしれない。 --「迷信なんてナンセンス!」「古い日本を脱ぎ捨てよう!」のメッセージ映画だったのかなぁ。なんて狭い視野で考えてみたり。 --せっかく、「科学」派の旦那さんが居たのに、なんだか活かしきれていないような…。御隠居にないがしろにされたりしてて、鬱屈は溜まってただろうに。健吉の味方をするとか、もっと話に絡んでも良かったろうと思うだが。作成中に体調でも崩したのかな? --事有るごとに店の裏庭へ穴を掘って埋めていた「番頭のバカヤロー」の数々を、不審に思った番頭が掘り起こしてしまいびっくり。なシーンも、当時はさぞかし斬新だったろうと思う。 --個人的には、エセ祈祷師のウラナリみたいな“大先生”が好きです。隠居の「アラヤダ」も真似しちゃいそう。 --青島幸男の『いじわる婆さん』もそうだけど、喜劇人男性の扮する「くそばばぁ」には、えも言われぬ 味 が有る(志村ケンのもね)。柳家金語楼の「おトラさん」は気の良いオバサンだから、ちょっと違うが、味わいは似てる。と思う。