Fさんの入浴

先日の続きになるんですが。

Fさんは病院からの移籍。
現在は歩行器使用、着脱も摂食も全て自力ですが、
入所時は車椅子使用。病院ではミキサー食、入浴はストレッチャーな機械浴だったんだそうな。
“これ以上、医療処置をする必要はないので退院となり、一応は認知症が認められたため入所となった”わけです。

ここの事は、「別の病院だと思っていた」んだそうです。
病院の、“施設の流れに組み込まれた生活”が、Fさんのニーズにばっちり合っていたらしいんですな。

何でもやってくれて、システム化された看護の環境から、自力推奨の介護の環境へ。

「帰りたい」とは仰いません。
家に帰れば、誰も面倒見てくれない。ってのをご存知だからです。
「ここでは何もしてくれない」と御不満です。

それに関してワーカーがいくら説明しようが、Fさんが納得されるはずもなく、
「いつか、別の病院に移る」日を待っておられます。


ご自分の中で、いろいろな決まりごとをお持ちのFさん。
ワセリンを痛み止めだと信じて疑わず(用途が違うって)、腰痛ベルトを腰巻のように(そんな巻き方じゃ効かないって)使う。
「やって下さい」が口癖のFさんですが、「めんどくさくないの?」とこちらが思ってしまうほど、毎食前後の離床時臥床時には必ず律儀に付けてます。
偽薬が有効なのは言うまでもありません。
寝巻きに着替える時間、寝る前最後のトイレの時間、就寝前薬を飲む時間、等々、時計と共に生活しておられます。
が、「時間になったから動く」のではなく、「時間になったから用意してくれ」なわけでして、5分も過ぎればコールが鳴り響くわけですが。


「決まりごと」←ここに着目してみたんです。
入浴を、曜日で決めたらどうかな。
他のワーカーに打診したところ、概ね“その曜日”で対応できるだろうとの事。

で、ご本人に伺ってみました。
「病院では何曜日がお風呂でした?」/「覚えてないよ」
「どのくらいの頻度で入りますか?」/「週に一回でいいよ」
「ここの決まりで、週に二回は入って頂きたいんです」/「わからないよ」
「今日、入浴していただいてて、今日は水曜日だから、水曜と土曜なんてどうかな?」/「入りたくないよ」
とかなんとか会話を続け、

「当面、水曜と土曜を入浴の日にしてみましょう」とお約束をしてみることとなりました。
これで、「水曜だからお風呂ですよー」が使えるわけです。
まぁ当然拒否はあるでしょうけども。
「寒いから」「痛いから」「具合が悪いから」「世話してくれるのがアンタじゃ嫌」 理由には事欠きませんから。

Fさん、湯船に入るのが嫌いだってわけじゃないんですよ。
洗身や着脱を自分でやらされるのと、しょっちゅう座ったり立ったりするのがキツイってだけで。

どうなりますことやら。