家族へのタテマエ

カンファ会議に可能な限り御家族を同席させる方針になったそうだ。
先日の会議では練習として、課長が家族の役をしていた。
家族に対しての言葉遣い、家族が気になる事へのフォローに気を配れとのお達し。家族との関係作りが主な目的らしい。

“一般的ではない言葉を使わない”“ショックを与える言い方はしない”“不要な不安は与えない”等、いくつか注意点が挙げられていた。
んで。
家族役の課長からの質問を挟みつつ、返答の内容にチェックが入りつつ、整然かつシドロモドロに進行していた。
自分はもはや職員では無いので、奥の休憩室で戴いた検食を食いながら(ぉぃ)傍聴させてもらっていた。

さて。対象入居者A氏の、他者やワーカーへの暴言に関する対応策の段となり。
課長曰く、「性格が悪い」と云うイメージを家族に与えるのはマズイ。と。ソフトな、穏便な言葉を使おうと。
そこへワーカーが反論した。「確かに家族にはショックかもしれないが、他入居者が被る精神的苦痛の大きさを知って欲しい。可能であれば、家族から一言たしなめるなり釘を刺すなりして欲しいくらいだ。A氏はまだそれを理解できるレベルなんだから」
相談員ナベ氏。「A氏とワーカーの会話が少ない事は否めない。施設サイドでどれだけの事をやったか。やっているか。その結果どうなのか。どうして行くのか。その辺りの材料が無ければ只の文句になり兼ねない」

ふんふん、なるほどなぁとマカロニサラダを頬張りながら頷いた。傍観者は気楽で良い。
だってなぁ、確かにA氏は言う内容もする事もキツイもの。酷い事言ってるってのを本人が認識して無いから余計にタチが悪いんだよ。「何度も何度も同じ事聞いて。あなたバカじゃないの?」なんてのは序の口。「アナタが触ったものが全部無くなっちゃうのよ。私が無くした物、みんなアナタの所に有るんでしょう」とかさ。言われた方はたまらんわな。覚えてないんだしさ。
でもって、第三者に“告げ口”しちゃうんだな。陰口だね。振れ回っちゃう。真実なら良いけど(良かないが)A氏の思い込みだからね。もしくは自分自身が置き忘れただけだったり。何度も同じ事尋ねるのはお互い様だし。
挙句の果てに「この人の顔見ながらご飯食べるのイヤだわ。気持ち悪いんだもの。ただでさえ美味しくないのに余計に不味くなっちゃう」なんて目の前で言われたら、どうよ。
ありゃぁ痴呆だからって範疇じゃ無いよ。息子だって「あんまりズケズケ言うもんだから友達減らしちゃうんですよ」って認めてるくらいだ。知ってんだよ。家族は。もし聞いても「グレードアップしたなぁ「痴呆の所為かなぁ」くらいなもんだと思うぜ。
かと言って、家族に「迷惑掛けて申し訳ありません」って言わせたいわけじゃないんだから、難しいとこだわな。