施設での“自由”って可能なのか?

ここに。
拘りの元独居者A氏が居る。
家族と疎遠でビミョウな痴呆度から、独居に不安覚え、自ら施設入居を希望された天晴れな人である。

まず。
歩くのが好き。
そして、
生活習慣に執拗なまでの“決め事”を持つ。
《食べ物》
在宅時はフードプロセッサーを駆使し、お手製ミキサー食。
朝はパン+手製。昼は芋+手製。夜は配食サービス(もちろんミキサー)だった。
なぜなら入れ歯が合わず噛めないから。“歯肉が無いから合わない”との事。
義歯使用だが食事時は外してしまう。
でも煎餅は食う。ばりばり食う。
果物は潰さなくても食べられるけど、野菜はダメ。
《飲み物》
決まった時間に決まったものを決まった分だけ。
「50歳からこれでやってきたから」
実績がある。健康であり問題無い。だから変更する必要は無い。
確かにそうなんですがぁ。。。
《薬》
眠剤のみ。それも看護師曰く必要以上。

トイレに関しても一過言あるんだが、コレに関しては差し控える。(ってほんとはこれが一番面白い…ぃゃぃゃ)


↓<食べ物>
歯科を定期受診とし、義歯調整中。
でも「痛くてダメ」と調整難航。
ミキサー食から刻みになっているが、食材によってはミキサーだったり常食だったり。
持込のフードプロセッサーを使ってもらおうという話も出たんだが、ワーカー間の賛否が折り合いつかず、看護師からも義歯調整でなんとか。と希望もあって使用はしていない。
ここがねー、全くのグループホームだったら問題無かったんだけどねー。
“施設内グループホーム形式”ってのが曲者ですな。
でも頑張って義歯を使って食事してくださってる。有り難い。<飲み物>
コレは譲らない。何をどう言っても受け付けない。
「なら部屋へ持って帰る」とおっしゃる。
飲むのではない。頃合を見て処分するのである。
居室内に冷蔵庫があるし、自己管理ばっちりなので構わないんですが…。
一日に600ccとかだとね。。。施設としてはね。。。。。<薬>
看護師の度重なる説明や、説得にも頑として減量や変更を納得しない。どう説明しても首を横に振る。
夜中にトイレを使う際、ふらつく。家では何度か転んだ。
現に此処に来てからも尻餅だってついた。
それでも「だって眠れないんだもの」「寝てないのよ全然」
実際イビキをかいて、寝息を立てて眠ってらっしゃるのだ。
「皆さんにそう言われるんだけど…」
“寝た気がしない”だけなんだと。言ってみるんだが譲らない。
だって、現に私がトイレを置きに入ったのを気付かなかったでしょうと話すと「あら、そうねぇ。でもね…」。
顔の横だぜ。目が覚めてたら覚えてないはずは無い。A氏の痴呆レベルはまだまだ低い。

現在、眠剤は粉になっている。偽薬が混ざっているのだ。
精神的不眠(そんな言葉はありません)なA氏の体が納得するはずも無く。
夜な夜な「眠れなくってタイクツだから」と此処へ来てから使い始めたシルバーカーを押してフロアを散歩している。
ワーカーによっては部屋に押し返すらしいが、僭越ながら眠れなくて動いちゃう気持ちはとーても良く解るので、自分は一緒に歩いたり、大丈夫そうなら見守りで対応している。

                                1. +

勝手な事をされると困るってんじゃないんだ。
いいんだよ。ここは“家”なんだから。
でもなぁ。同時に“施設内”なんだよ。事故があってからじゃ遅いんだ。職員には安全を守る責任ってのがあってな。
「私がやったことなんだから誰も貴方達を責めないわよ」
…有り難いお言葉なんですが…外部には通らないんだよ。やはり職員の責任なの。

独居が長くて。全てを自己管理してた人だ。
此処に来てもそのままの生活をしていただきたい。これは建前無しにほとんどの職員が考えてる事だ。
今にストレスで体調を崩す。実際熱も出たし。

他人の干渉に慣れておらず自由気ままにやっていた人が、四六時中監視下にある雁字搦めの生活に耐えられるわけが無い。
まだ此処に来るのは早すぎる。と思ってしまう。
もしくは気軽に外に出られる施設なら。と。