お風呂への誘い方:Fさんの場合

身なりに構わないわけじゃないんだけど、面倒だったり億劫だったり体動かすのがキツかったりして、入浴には積極的ではないFさん。

昼食やおやつにはフロアに出てきて下さるから、その帰りになだめておだてて(もしくはお喋りしながら“いつの間にか”)風呂場へ引っ張り込む。
ってのが通常なんだけど、タイミングが合わない時もある。
そういう時は臥床されてるとこに伺って、起き上がって頂く事から始めないとなんない。

起こし方は、やや強引派やじっくり説得派とワーカーそれぞれ。
引きずって行けたり、「約束したじゃん」なんて口先だけのウソが通じるほどレベルが落ちちゃぁいないから、Fさんとの心理戦。
引いて緩めての駆け引きがキモになるわけですね。

私は夜勤明けで勤務からは外れていたので、ワーカーさんたちの動きを見させていただいてた。

今日は、“やや強引派”のワーカーさんが起こしに掛かってて。
居室内で
「寒いよ」/「大丈夫、暖かくしてあるから」
「今日はいいよ」/「体が臭くなっちゃうよ」
「体が痛いよ」/「温まれば楽になるよ」
「楽になんかならないよ」/「入ってみなけりゃわからないでしょ」
等の会話が繰り広げられている。
その間、ワーカーさんは「下着はどれにしようか」「着替えはこれにする?」と言いながら着々と入浴の準備を進めている。

そしたらね、
どっちかというと“自発尊重、じっくり説得派”の載せ上手なワーカーさんが、
「さて、そろそろ追い討ちかけてくるかな」
って。

先に入ってたワーカーさんが着替え等の準備をし終わった頃を見計らって、
お待たせー。迎えに来たよ。脱衣所あったまったし、こっちの準備も整ったよ」
って。

タイミングが上手いなぁ。と思った。
Fさんてね、依存度高くて頑固で理屈屋だけど、人の好意悪意に敏感なの。
「せっかくやってあげたのに」って事を言われたり感じたりすると拒否が発動するけど、御自分から「せっかくしてくれたんだから」って思えば動いて下さる。
納得は出来なくても、無理強いされたって感じなければ、自発的に動いて下さるんだ。

その後間もなく、Fさんの歩行器の音がして。
めでたく入浴。

援護射撃の技、学ばないとね。