犬猫ワールドへ外出付き添い

車椅子使用だが痴呆というよりパーキンソンのA氏と、ADLは高いものの脳梗塞の手術以降めっきり意思疎通度が低くなったB氏。
当初は苺狩りに行く予定だったんだが、連絡が取れないとかで犬猫パークへ変更。
能動的AAA(そんな言葉はありません)だ。

職員とパート各一名と自分、計5名。
運転手兼任の職員Oさんは、介護に関してはベテランで如才なく、各種障碍や医療にも強い。更には電気系統にも精通していて手先も器用。離床センサーや細々とした便利グッズを即座に作れるというツワモノだ。
が、実はとっても方向音痴である事が判明。
パートさんと「Oさんも人間だったんだねー」と笑った。貶しているのではない。安心したのだ。
かてて加えてナビげーションたる自分も方向音痴に関しては引けを取らない。
路を間違えるであろう事は容易に想像できた。
外出の采配を請け負うナベ氏もその辺は重々承知しているから、「まぁ、今日中に帰って来いや」と生暖かく見送ってくれた。
まぁ、期待を裏切らず(?)しっかり迷子になったわけですが。Oさんごめん。
車中では「コブシが満開だよー」「早咲きの桜だ!」等、入居者とお喋り。歌を歌ったりして車酔い防止。
「目的地に着かなかったら、そのへんぐるっと回ってご飯食べて帰ろう」
とか何とか無責任な話しをしつつも目的地に到着。

ワーカーOさんは猫アレルギー。パートさんは犬が苦手。自分はどっちも大丈夫なので付き添い人数に関しては一対一が可能。

猫ブースと犬ブースにエリアが分かれており、カラオケボックスみたいな戸建のスペースに、様々な種類の犬や猫。
先ず猫ブースへ。
広目の建物の中には数匹の猫。長いリードで恕リがれて入るけれど、行動範囲は広く取れている。
物への執着が強いA氏は、性質柄一旦抱き上げたが最後どうにも離さない。堪らなくなった猫が暴れて逃げると、ゆっくりゆっくり追いかける。隅に追い詰めて優しく撫でる。服は毛まみれ。
B氏は猫よりもワーカーとのおしゃべりに夢中。猫を傍に寄せても目に入っていない様子。
犬ブースへ移動。
希望者は散歩も出来るらしいが、自分達は見送り。おとなしい犬だけれど、この面子じゃ危険が大きすぎる。
A氏が「甘酒が飲みたい」と突然の要望。今春だぜ?甘酒なんて無いよと笑いつつふと顔を上げると“甘酒あります”のチラシ。何と良いタイミングかと一同喜びイソイソ注文しに行くと、「あぁ、すみません。今はもう無いんです。あのチラシはウソです。」とや。
…だったら剥せよ。ささやかな抗議として、チラシを裏返しておいた。
仕方ないので他の飲み物を注文し、露天の食事スペースでまったりしつつ寄って来た散歩中の犬と戯れる。
不穏気味になってきていたB氏も、犬の効果か小康状態になった。
二人とも表情が良い。外に出るって事は、それだけで気持ちが和らぐのかもしれない。

「○○さんなら、散歩喜びそうだね」「犬グループと、猫グループに分けて、別行動した方が効率良さそう」等、次回への企画が盛り上がる。

A氏お気に入りの、とあるデパートで食事。
両入居者の希望により、蕎麦屋に入る。
テーブル間隔は広くない店内だったが、店員さんが車椅子にも配慮下さりスムースに着席。
ホーム内では餅は御法度。「ここでも駄目かしら?」と悲しそうに力うどんを所望。「ホームではね、皆を助けられないから(餅は)出せないんだ。ここなら万が一喉に詰まっても助けられる。がんがん食おう」力強い職員Oさんの言葉。心底嬉しそうに餅を食べる餅大好きなA氏。
ここのところ食の進みが今ひとつのB氏。心配してたんだが、食べる食べる。
起動は遅かったものの、向かい席のパートさんの丼にまで手を伸ばすほどの意欲。箸が止まるたびに声を掛けつつ気を向け直しつつ、完食。2時間近くかかったけど、無問題。「これが本来の彼女のペースなんだよね」と話し合う。ホームでは、配膳から下膳まで1時間弱が限界。その間も周囲はバタバタ。どうしても急かされる。
学校の給食もそうだけど、ゆっくり食べたい人には辛い環境だよな。
外食万歳。

にしても。
ボランティアって楽だー。使うお金の管理とか、帰還後の金計算とか、記録落としとかしなくていいもんな。入居者に集中できる。これはでかいですよ。
それに今回は、ナベ氏の配慮により自分の昼食代も出た。有り難くて言葉が無いほどだ。
「普段、外へ出ないから良い機会。また誘って下さい」と厚かましい頼みまでしてしまった。
花見に呼んでもらえないかなー。(おい)