見える部分だけじゃ解らない事もあると思う

自分の勤務は痴呆フロアだが、比較的軽度の入居者が多い。といっても介護度ぎりぎり1から5まで様々なんだが。

医療重視のフロアや、重度痴呆のフロアからは、とかく“楽”と言われがちだ。
痴呆が軽いから。動けるから。意思疎通が可能だから。

あのな。それは両刃の剣なんだよ

確かにトランスの回数や身体介護度は少ないから腰は楽さ。

だがな。

障害だけで痴呆が無い人も居る。聾者・盲者も居る。胃ろうも居る。知的障害も精神障害も居る。
徘徊常習も昼夜逆転も暴れん坊も泣き虫も、混然一体となっているんだ。一緒くたなんだよ。
動くって事が。クリアな部分が有るって事が。どんなにキツイか。
何をして“楽”かなんて比べる事は出来ないんだ

食事介助に入れば「差別」「食べたくないなら餓死してしまえ」
歩行介助に入れば「あの人ばっかり」「一人で歩かせなさいよ」
排泄介助に入ろうとすれば「私はボケちゃいない。キチガイ達と一緒にしないで」
「この人気持ち悪いから席を替えて」
「歌うの止めさせて」
「隣のババァが俺の部屋小便しやがった」
「バカと一緒に居るとこっちまでバカになる」
等々々。列挙すればキリが無い。

理解力の差から入居者間でいざこざが有る。痴呆度が上下関係になって言葉による暴力が有る。
タガがぶっ飛んでるから放っておけば信じられないくらい辛辣な言葉が飛び交うんだ。それをまともに喰らったら壊れちまう人だって居る。
それを収めて回るだけだって一苦労だ。
個々の理解度に応じて言葉を変え態度を変えて宥め誤魔化し説明をし。
事前に手を打てるものは打ち。矛先を変え。
精神的疲労は必ずしも楽じゃないぞ。
勿論、「病気だから仕方ないね」と言ってくれる人だって居るけどな。

訴えが来た分の対応で手一杯で言ったもん勝ちになってしまい、解ってくれる人ほど我慢してもらう羽目になる。それだって歪を生むし、言葉に出せない人だって居る。
差異無く同じように関わろうとする事がどれだけ困難か。

本当に楽だと思うんなら来てみろ。1ヶ月でもいい。そして教えてくれよ。どうやったら“楽”なのかをな。