娘へ罵詈雑言

下の日記に書いた、自立度抜群・クリア度最強のA氏に、娘さんの面会があった。

その前に、娘から電話が来た。んだがぁ。
あのですね。アナタの親は老健に居たんだよな?それも一年半。面会も行ってたそうな。
それなら施設の一日のスケジュールってのは、だーいたいは把握してらっしゃいますよね?
アナタが電話を掛けてきた
朝の8時過ぎってのはね、
朝ご飯真っ只中なんですよっこの施設もっっ
時間を考えろコラ。施設に限らず、7時から9時はちょ〜っと控えないか?
と言いますか控えて下さいお願いします。
どんな急用かと思ったぜ。
内線なら無視するが、外線だ。出ないわけには行かないだろうがっっ。

歩行・トイレ・下膳・食事摂取、その他諸々の介助を全て中途で何とか区切りを付け、汗だくで電話を取ってみれば。
「あのー、面会に伺いたいんですが」
死ねボケ。

…深呼吸。

で。

来たのはったら15時。これは まぁ良い。
その間、面会に来てくれると知ったA氏が、どんな思いで一刻一刻アナタを待っていたかは語るまい。

従来毎回一悶着あるアナタの面会。
今回はとても穏やかで、和やかで、どうしちゃったのかと訝しむくらいの静かさでした。
ありがとうございました。
三味線も持ってきて頂いてね、手芸の必要物品もお持ち頂いて。
お手数でございました。

ならな、それならな、
そのまますんなり帰ってくれ

出口に向かって歩いてくるA氏が自分に笑顔で言った
「なんだかね、娘が連れ帰りに来てくれたみたいなの。明日の病院(受診)は家から行くの。嬉しいわぁ」

どういう事なんだそれは
オイラ耳を疑っちゃったよ。

一緒には帰れない。此処からは出られない。
そう知った時のA氏の豹変。
その直後から吹き荒れた嵐。
「ここは監獄?」「自由は無いの?」「娘にひどい仕打ちをされて」「浮浪者になります。出して頂戴」「野垂れ死にすれば娘は本望なのよ」
貴方とはもう話したく無い。家族の問題よ。向こうへ行って頂戴。等々言われながらも説明説得していた30分以上の間、隣でアサッテの方を見ながら座って居やがって。

やっとこさっとこ どうにかこうにか 翌日の受診手配が変更不可である事を武器に、今晩は此処に泊まる事を理解いただき、ひと段落。
…しかけた処に口を挟みやがって。
睨んだのが気に食わなけりゃ上にでも何処にでも言いやがれ。

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取りあえずは落ち着いたA氏を残し、
「ちょっとよろしいですか」と娘を外へ促した。
豹変の原因を聞いて頭を抱えた。以下は会話を略して記す。

「あんまりにも可哀相で。それならこのまま家に連れて帰ろうかと。つい言ってしまったんです」
「出来れば事前のご連絡が頂きたいんですよ」
「あらぁ。まぁ私もね、明日は朝の9時から家を出てしまうからどうしようかとは思ってたんです」
「…外泊や外出の件に関しましては、ご本人さんとでは無く、先ず相談員や職員にご相談いただけますでしょうか」
「まぁごめんなさい。じゃぁ、例えば来週の土曜日とかなら宜しいのかしら」
「では、書類をお持ちしますので、ご記入いただけますか」
「でもねぇ、その時に母が落ち着いていたら良いんですけど。あんな風じゃ、一緒に帰ってもまた大変ですから」
「…。ではまた御本人さんの御様子で」
「そうですねぇ。ご迷惑おかけします。ほんとに頑固な人で。落ち着いたみたいだし、帰ります」

                            1. +

ふざけんなこのボケナス
迷惑なのはテメェだよ。
その無責任な言葉が、今までのワーカーの気遣いを全て無にしてくれるんだ このカス


アナタの帰った後、
「あの子帰ったの?何て言ってた?」
再度 一頻り泣き、怒り、訴えが一巡りしたのをアナタは知るまいな。
居室に戻るまでにどれだけ時間が必要だったか。その後再度落ち着くまでにどれほどA氏が血圧を上げたか。

えぇ、えぇ、お持ちいただいた三味線が、大変役に立ちましたよ。
成り行き上、今度の敬老会に、自分と二人で“黒田節”を演奏する事になり、
自分は基礎も知らない三味線を練習する羽目になりましたけどねっっ。

結局敬老会当日よりかなり前にA氏には安定剤が入っちゃって三味線どころじゃなくなっちまってやりませんでした。