施設慣れ

新しい入居者が入った。老建から来たA氏91歳。
身体的な自立度はすこぶる高い。
精神面は未知数。今日に限った感想を云えば
“立て板に水の話し方をするが、他人の話は聞いていない”
質問するぞ、とアピールしてからなら窓が開く事もあるが、気付いてもらえないことも多い。

腹筋を使って声を上っ面から空気と共に押し出すような喋り方をする。
泣いてる時に叫ぼうとして悲鳴みたいになる感じ。を通常のテンションと通常の声の大きさでやる。
うーん。解り難いかな。

独居から連れて来られる人と違い、施設をたらい回しにされてる人ってのは、ある意味順応性が高い。
(レベルによっては施設が変わったのを気付かない人も居る。)
「私の部屋はどこ?」「トイレはどこ?」「あなた誰?」
の切実さに差が出るのだ。


で、このA氏。
実に。実に 介助されることに慣れている
歩行は手引き程度で可能。真偽はともかく尿意は在る。もちろん起居動作もスムース。
誘導声掛けのタイミングを把握する為、トイレに行った時の事。
トイレに入る⇒便器を確認する(フタは開けてある)⇒手すりに摑まる。
そして。
待つ
…。⇒然るべき介助をする。
「行くまでは出るかなーと思うんだけどね、座っちゃうと出ないのよ。出るのに時間がかかるからね」
等など、こちらのすべき対応を教えて下さる

…確かに個々それぞれだから、助かるんだが。。。

用が済む⇒保清自立⇒立ち上がる。
そして。
待つ
それも、介助がし易い方向に体を向けて下さる
…。⇒然るべき介助をする。
介助されている間は、動かない

…確かに大変に助かるんですが。。。
「よく仕込まれてるなぁ」と感心してしまったのが本音。
卑屈な雰囲気は全くなく、妙なオモネリも見受けられないんだがね。
そりゃ居ましたよ。転所当時、例えば、ご飯の後は「入れ歯を洗うんですね?」って聞いてくださる入居者も。車椅子の人でした。
トイレの後は目で洗面台を探したし、洗面台と車椅子との距離を自分の腕でキープすべく、移動中に準備していた人。
だから、そう珍しい事では無いんだがぁ。

更に、運の良い事に本日は入浴日。
誘導中、こちらの説明を待たず、「こっちがお風呂?「此処で靴を脱ぐのね?「タオルは?」等々、ご自分から確認して下さる。
で。脱衣所の椅子に座る。
そして。
待つ
何も言わない。何も尋ねない。
確認すべき事は見事に網羅されている。後は脱衣介助を受けるだけなのだ。

介助に頼っているのかと云えば決してそうでは無い。
準備をして促せば、洗身だろうが着衣だろうが殆ど可能。見守りでオッケー。
つまり、
“介助されるべきポイントを知っている”
のだ。施設によって異なる慣例や主義、介助の範囲等において、
“概ね対応できるテンプレートを持っている”

これが初日の感想だった。