今日は出前の日

月に一度、ユニット毎に出前を取る。今日はその日で自分が担当。
朝の申し送りの後そのまま入居者に注文伺いに行く。
レベルによってはこちらで決めさせていただく。
どこの施設もそうだと思うが、施設内の食事は得てして味が薄い。
少ない予算の中で栄養バランスだのバリエーションだの盛り込む要素満載だから、栄養士の苦肉の策なのだろうが、評判がイマイチなのは事実だ。

糖尿病・高血圧・アレルギー等への対応食、そして一口大だ刻みだミキサーだペーストだと様々な形状。薬との飲み合わせ。
なかなかに面倒くさい。
でも月一回の出前の日だけは殆ど気にせず、栄養士が見たら卒倒し泣き出しそうな物を皆さん召し上がる。
今までの努力を無にする様で大変に申し訳ないのだが、食べることってのは入居者にとって数少ない楽しみの一つ。お許し願いたい。

毎回の事ながら、地味に盛り上がるイベントの一つ。
半で押したような会話の後、必ずウナギを選び、そしてやはり一部を残し、その後にステーションへ来て○○のウナギじゃなきゃダメよ。という自称グルメさんが居たり。
ワーカー側の冒険として、本人の希望通り うどん を注文し、恐れていた通りお絞りやら靴下やらポケットから出したトイレットペーパーやら、一見違和感の無いものを器に入れてくださる入居者が居たり。

各入居者の食べ方・好み等によって、似たようなメニューにせざるを得なかったり、
通常、粥や刻み以上の形状を食べている入居者は、どうしても粥や うどん を選ばざるを得ずパターン化してしまったりするのだが、記憶力の妙により、苦情を言われないのは助かる。

解り易いのが、ご飯茶碗におかずをてんこ盛りにして食べるA氏。好き嫌いは有るが制限は無い。
「今日の昼飯は出前ですよー。何か食べたいものありますか?」
A「…。」
「ご飯と蕎麦と、どっちが好き?」
A「ご飯」
「肉と魚とどっちが好き?」
A「…。」
「魚と、肉と、どっち食べたい?」
A「…肉」
「豚?牛?鳥?」
A「牛は良いね」
「はぁいありがとー。お昼ごはん楽しみにしてて下さいね」
って事で牛丼決定。
とか。

ここに一人、問題人が居る。
糖尿病のために食事量と水分量の制限があるんだが、自立度がひっじょーに高く、66才の若さゆえにとってもアクティブなB氏。
ワーカーが何処に隠しても錠(トイレに付いてる様な奴)を掛けても、ワーカーの動きを観察・記憶し、いつの間にやら皆さん用の菓子を引っ張り出してむさぼり食っていたり、
お茶の入ったポットを流し台に出していようものなら鳶の様に急来し、他者介助の僅かなスキに半分方空にしてしまったり。
ポットが無ければロック付きもなんのその、湯沸しポットから白湯を飲む。
湯飲みを別所に移しても、魔法のように出してきて(隠れて居室にストックしてある)ガンガン飲む。
専属の人間がいて始終張り付いてるわけじゃ無し、病気の説明したって記憶に残る仕組みは故障。どうせぇっちゅうねん。