不眠のキモチ

現在1時過ぎ。睡眠時間少ないにも関わらず元気。
眠気はある。んだけど遊離していて体に来ない。
風呂に入るなどは面倒で、何をしようというわけでも無いんだが、横になってもすぐ起き上がってしまう。まるで職場の入居者の如し。
そうか、もしかしたら夜間10分毎に起きて来る人達の中には、こんな感じの人が居るのかも。
などと変に共感してみたりする。
原因は何なのだろうと考えたりしていたが、レベルに因りこそすれそんな物は無いのかもしれん。

昼夜逆転・不眠は痴呆を促進させるとか。
だから昼間はやっきになって覚醒を促し、夜の良眠を確保しようとする。
やれレクリエーションだ歌だ散歩だお喋りだ。起きろ動け目を覚ませ。
夕食が終われば「眠いねー」「疲れたねー」と暗示を掛ける。人によっては布団が温まるまで傍に居る。

眠剤は、自立歩行者や徘徊常習者には使えない。強制的な眠気により足元がふらつき、転倒などの危険性が有るからだ。
如何に日中穏やかに過ごして頂くか。如何に落ち着いて眠りに着いて頂くか。もし日中に不穏があったのなら、それをどうほどくか。引き擦らせないか。
手腕が問われる。


「あだし、どうしたらいっかなぁー」
ベッドに起き上がりワーカーに首を向けるA氏。独歩で転倒し骨折した既歴を持ち、歩行には介助を要す。
「夜だよ、寝ていいんだよ。今日は疲れたっしょ」
「そかなぁー」
そして十数分後
「起ぎよっかなぁー」
「夜中だ夜中。横になんなよ。布団が冷めちまうぜ?」
「そかなぁー」
四半時の後、布団を剥いでいるA氏。
「起きてるの?」
「なんだかさぁー、気になっちゃってさぁー」
「そっか。なんだろね」
「なんだがなぁー、わっがんねんだけんどもさぁー」
「んじゃ、便所でも行ってみっか」
「そだなぁー」

そんなことが繰り返されて夜が明ける。
日によって1時間毎だったり15分毎だったり。
あまりにも頻回な場合はステーションでお茶など飲んでいただく。でも10分もすれば
「寝よっがなぁ、部屋行くよあたし」。
逆に2時間起き上がらなければ逆に心配になって呼吸を確かめてしまう。オン年92歳。
間あいだの眠りは深いので、それがA氏のパターンなんだろう。
そしてA氏の“朝”は早い。
4時にもなればもう5分毎の騒ぎじゃない。歩行が不安定なので要介助なんだが、他の入居者の対応をしている内に歩き始めてしまう。よって、適当な時間に起きて頂き、フロアで座って頂く事になる。
他に誰も起きていない中で待たせすぎると部屋に戻ろうと歩き出すから、その時間の見極めが難しい。
まるでゲームみたいだな。と思ってみたりする。

外が暗かろうと明るかろうと、他の人が何をしていようと、そんな事は関係が無い。
眠く無いものは眠く無いし、寝られないものは寝られない。
それぞれの生活スタイルがあるはずなのに、痴呆度が高ければ高いほど、問題行動が多ければ多いほど、規格のサイクルに押し込められる。
「私は無理やり起こされて、なんであの人は寝てて良いの」
「何であの人は部屋で食べてるの」
「どうしてこんな時間にご飯食べなきゃならないの」
さてさて、その説明説得の難しさよ。
その時は渋々了解してくれたって、場面が変わるまで繰り返される同じ疑問。

施設だから。
団体生活だから。
そんな事は入居者の知った事では無い。
「家に帰りたいよー」
これを言わせてはならない。


体がモゾモゾして落ち着かない。横になっても眠れない。
それなら起きていよう。
ってのが出来るのは、自分が施設に居ないから。
夜中に何をしていようと、誰に影響があるわけじゃ無し、転んだら大変とワーカーがすっ飛んで来るわけでも無いから。

がんじがらめの10年と、自由気ままな1年。
本人の希望と、周囲の意向。
自分は未だ、どちらを信条にすべきなのか判らない。