外泊

入居者が一人家に帰る。
痴呆の関門である季節の変わり目で急激にレベルダウンしたA氏。久しぶりに面会に来た家族があまりの落差に驚いたらしい。2泊するのだと言う。
家族の判別も、立つ事も、可食物を識別して口に入れる事も、排泄を意識する事も、話の内容を理解する事も不可能になってから連れ帰ったって遅い。遅いんだよ。

悪意に過ぎようが、家に帰れてシアワセだったよね。と言いたいが為としか思えない。
なにが幸せなものか。
家から離れてどれだけ経ったと思ってる。今となっては不慣れな場所なのが実情だ。
介護者の感情や動きに敏感で驚き怯え、一度掴んだら不安が解けるまでその手を離さない。微熱持ちで環境の変化に高熱を出し、体位交換をしなければ2時間で皮膚がただれてしまう。
どうやって室内を移動するのか、車椅子が通るのか抱えるのか背負うのか寝かせたきりなのかは知りたくも無いが、外泊の前に半日でも良いから現状を見に来たらどうだ。やはり無理です中止しますと言っても責めはしないし、むしろそちらを勧めるのに。

まぁね、看護婦やワーカーから充分説明を受けるだろうし、準備は万全なんだろうけど。
親戚わんさか呼ぶんじゃないだろうなぁ。パニック起こすぞ。
尻だの肩だの真っ赤っかになって帰ってくるんだろうなぁ。せーっかく薬不用にまで治ってきたのに。
連れて帰るより頻繁に会いに来て欲しいよ。色々御事情はあるのでしょうが。